甲状腺

甲状腺は、のどぼとけの下にある、蝶のような形をした小さな臓器で、体の代謝に関わる甲状腺ホルモンを作ります。甲状腺ホルモンが過剰になったり、不足したりすると様々な症状が出ます。甲状腺の病気は20代から40代の若い女性に多く見られる病気ですが、甲状腺機能の異常は不妊症の原因にもなります。

以下の症状に当てはまる方は受診をおすすめします。

  • 首がはれる
  • 動悸
  • 汗をかきやすい
  • 手のふるえ
  • 息切れ
  • 体重減少
  • 下痢
  • だるさ
  • 足のつり
  • 脱毛
  • むくみ
  • 記憶力の低下
  • 集中力の低下
  • 便秘
  • 寒がり
  • 声のかすれ
  • 生理不順
  • 皮膚の乾燥
  • 不妊
  • 暑がり

当院では、専門医が超音波検査を実施し、当日結果をご説明致します。ご心配なことがありましたらお気軽にご相談ください。

甲状腺ホルモンが過剰になる病気

甲状腺ホルモンが過剰になると、全身の代謝が過度に高まり、体重減少・動悸・手のふるえ・息切れ・暑がりなどの症状がでます。甲状腺ホルモンが過剰となる病気には「バセドウ病」、「亜急性甲状腺炎」、「無痛性甲状腺炎」などがあります。

バセドウ病

バセドウ病とは?

甲状腺を刺激する自己抗体(TRAb、TSAb)が甲状腺を刺激することによって、甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気です。女性に多く、30~40歳代の年齢の方に多い病気です。

バセドウ病の検査

・診察
甲状腺がはれていないかを触診で確認します。
・血液検査
甲状腺機能・自己抗体(TRAb、TSAb)の有無を確認します。
・超音波検査
甲状腺の大きさや、血流を確認します。

血液検査・超音波検査は当院で行うことができます。診断のために、さらにアイソトープ検査(放射線核医学検査)が必要な場合には、連携病院などにご紹介させていただくこともございます。

バセドウ病の治療

バセドウ病の治療には、「飲み薬」、「放射線ヨウ素治療」、「手術」の3つがあります。まずは飲み薬(甲状腺ホルモンの合成を抑える薬)での治療を行います。飲み薬の治療で徐々に甲状腺機能は改善し、通常は1~3ヶ月でかなり良くなり、自覚症状も治まります。飲み薬での治療を始めた1~2ヶ月は、薬の副作用が出やすいため、2週間ごとに定期的に血液検査を行います。甲状腺ホルモンが改善してきたら飲み薬の量を徐々に減らします。最小量の飲み薬で甲状腺機能が安定し、自己抗体(TRAb、TSAb)が陰性となったら、飲み薬の中止を検討します。飲み薬での治療は2年程度かかることが多いです。2年経っても薬を中止できない場合は、手術や放射線治療を行うこともあります。

亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎とは?

亜急性甲状腺炎は、甲状腺に炎症が起きる病気です。動悸や息切れなどの甲状腺ホルモンが多いときの症状とともに、「首やのどが痛い」、「熱がでる」などの症状がでます。亜急性甲状腺炎の痛みは、左から右など痛みの場所が移動することが多いです。原因としてウイルス感染が考えられていますが、まだはっきりした原因はわかっていません。

亜急性甲状腺炎の検査

・触診
甲状腺を押すと、痛みがあります。甲状腺が硬くはれることがあります。
・血液検査
炎症反応の上昇の有無や甲状腺機能を確認します。
・超音波検査
炎症性の変化がないかを確認します。

亜急性甲状腺炎の治療

亜急性甲状腺炎は自然に軽快する病気ですが、痛みの程度にあわせて「非ステロイド系抗炎症剤」や「副腎皮質ホルモン剤」を使用します。動悸がひどい場合や脈拍が速い場合は、脈を抑える薬を併用することもあります。

無痛性甲状腺炎

無痛性甲状腺炎とは?

甲状腺に炎症がおき、甲状腺の細胞が壊れ、甲状腺にためられていた甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出て、一時的に甲状腺ホルモンが過剰となる病気です。細胞が壊れても痛みがないため、無痛性甲状腺炎といわれています。橋本病(慢性甲状腺炎)をもともと持っている方が多いことから、自己免疫性の病気が原因と考えられていますが、原因ははっきりとはわかっていません。

無痛性甲状腺炎の検査は?

・血液検査
甲状腺機能や自己抗体(抗TPO抗体・抗Tg抗体)の有無を確認します。
・超音波検査
自己免疫の変化があるか、甲状腺内の血流を確認します。

無痛性甲状腺炎の治療

一時的に甲状腺ホルモンが過剰となりますが、その後は自然に軽快する病気です。通常1~4ヶ月以内には自然に治りますが、その後、甲状腺機能低下に移行することもあり、その場合は甲状腺ホルモン剤での治療を行います。

甲状腺ホルモンが低下する病気

甲状腺ホルモンが不足すると、全身の代謝が低下し、疲れやすさ・便秘・寒がり・むくみ・無気力・脱毛・生理が不規則などの症状がでます。日本での甲状腺機能低下症の原因として、一番多いのが橋本病です(橋本病の方すべてが、甲状腺機能低下症になるわけではありません)。

橋本病(慢性甲状腺炎)

橋本病(慢性甲状腺炎)とは?

橋本病は女性に多く、成人女性の約3~10%を占めるといわれています。自己抗体(抗TPO抗体・抗Tg抗体)によって、リンパ球が甲状腺組織を破壊し、炎症が生じるといわれています。
橋本病の検査は?
・血液検査
甲状腺機能や自己抗体(抗TPO抗体・抗Tg抗体)の有無を確認します。
・超音波検査
自己免疫の変化と甲状腺内の血流を調べます。

橋本病の治療

甲状腺機能が正常な場合、治療は必要ありません。ただ、甲状腺機能が変化することはありますので、半年~1年に1回は採血で甲状腺機能を確認します。
甲状腺機能が低下した場合には甲状腺ホルモン剤という飲み薬で治療します。甲状腺ホルモン剤は、ほとんど副作用がなく薬の量を調整して、甲状腺機能を正常に保ちます。

<甲状腺腫瘍>

甲状腺腫瘍は、頸動脈超音波検査やCT検査、MRI検査などでたまたま発見されることが増えてきています。甲状腺に腫瘍ができても、甲状腺ホルモンは正常であることがほとんどです。
甲状腺腫瘍には、以下のように良性と悪性のものがありますが、甲状腺腫瘍の95%は良性といわれています。甲状腺腫瘍が見つかった場合は、まずは超音波検査を行い、悪性が否定できない場合や腫瘍が大きい場合は、しこりに針をさして腫瘍細胞を調べる穿刺吸引細胞診を行います。

    良性腫瘍
  • 腺腫様結節
  • 腺腫甲状腺腫
  • 甲状腺のう胞
  • 濾胞腺腫
    悪性腫瘍
  • 乳頭癌
  • 濾胞癌
  • 髄様癌
  • 未分化癌
  • 悪性リンパ腫